2016年2月9日火曜日

四方宏明さん執筆の『共産テクノ』を出版します!




『共産テクノ ソ連編』が出ます。著者はテクノポップの第一人者で知られ、All Aboutでガイドを努める四方宏明さんです。



テルミンを生み出すほどの電子楽器大国だったソ連。一方でそれは「収容所群島」と呼ばれる抑圧体制を敷いていました。


若者達は当局の監視から逃れる為に、政治信条を問われないインストゥルメンタル曲に専念したり、あるいは音源を「サミズダート(地下出版)」で流通させたりと試行錯誤を余儀なくされました。結果的にダビングによって、ねずみ算式に増殖した非公式「テープレコード」がソ連全土に行き渡りました。


また著作権の概念が理解されておらず、情報も限られていた為、、欧米の人気曲をクレジットを載せず、オリジナル曲として発表する事も多発しました。そもそも西側の機材を入手する事が困難だった為、ミュージシャンが楽器を自作する事もありました。またわずか2トラックの録音機を駆使した「人力テクノ」まで現れます。


ペレストロイカ期には、国民の体力増強を図る政府と、国営レコード会社メロディヤ、そしてアメリカでブレイクビーツを目撃し、それをどうにかして取り入れたいミュージシャンの利害が一致し、「エアロビクス用の音楽」という建前の音楽が生まれ、そこから「スポーツテクノ」なるジャンルまで出現します。


更には「音楽芸術委員会」という本来、検閲の立場にいた組織が、ミュージシャンの音楽的な間違いを補正するなどして手助けし、音楽の品質を向上させていました。


またフランスのテクノバンド「SPACE」が、ソ連で公演して人気を博し、元々宇宙開発先進国だった事もあり、宇宙イメージと親和的な状況の中、ソ連でスペースディスコが大流行します。


この様にソ連のテクノは、アメリカやヨーロッパ、日本など資本主義陣営とは異なった環境で、様々な制限を課された事によって、不思議な形態へと進化していました。今の時点から見てみると、かなり変な事になっています。テクノが近未来風志向な雰囲気を狙っているだけあって、余計変に見えます。


このソ連のテクノの不思議な謎を、元々、テクノポップの第一人者として知られる四方宏明さんが徹底的に調査しました。テクノが音楽的に好みでなくとも、共産趣味的、いや文化人類学的に大変興味深いエピソードが盛りだくさんです。


今現在ロシアは様々な音楽ジャンルで、世界的に人気を博すミュージシャンを多数輩出していますが、その歴史的背景はテクノと通じるものがあり、ロシア音楽ファン全般にとっても参考になる話が多く紹介されています。必ずしもテクノ愛好家向けに限定した内容ではありません。


この『共産テクノ ソ連編』は早ければ3月8日頃発売予定です。224ページ、オールカラー、音源やアーティスト名全てロシア語表記併記と凝った造りで2200円です。なお今回は「ソ連編」とある通り、『共産テクノ 東欧編』もいずれ出る予定です。




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