2016年10月27日木曜日

『ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブック』が完成


『ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブック』が完成した。著者はアウトブレイク・ショウ氏。副題は「究極のアンダーグラウンドメタル」。


Tシャツやシールとともに。


この特製Tシャツは10月29、30日に開催される浅草デスフェストで販売予定。もし売り切れたら11月30日のディスクユニオンで開催されるトークイベントの時までに追加で制作する予定だ。




本書のカバーイラストを描いたのはタイ出身のSickness666という、この界隈では有名なイラストレーター。本書で紹介しているZygoatsisのボーカルも務めている。



真上から見たカバー。



カバーを取った表紙。白黒でも十分格好良い。


まずウォーメタル、ベスチャルブラックメタルというジャンルにあまり馴染みがない人に向けて、このジャンルがどういう立ち位置なのかを説明したイントロダクション。


各章の初めにはその時代の情況を説明。まずはジャンル黎明期の1980年から1992年。


ベスチャルブラックメタルの元祖Sarcófago。このジャンルで最もリスペクトされているバンド。白塗りにガンベルトという後のこのジャンルのフォーマットを築き上げた事でも知られている。またWagner氏は元々Sepulturaのボーカルでもあり、しかも後にはミナス・ジェライス連邦大学の経済学の教授になったという逸材。


本書に対談で登場するSighの川嶋未来氏もHadezが日本の出版物に登場する事など今まで全く考えられなかったと述べているが、登場。


来日も果たしたブラジルのImpurityにはインタビューでも登場して貰った。


目出し帽がインパクト大のGoatpenisへのインタビューにも成功。


Sarcófagoと双璧をなすカナダのウォーブラックメタルの権化Blasphemy。


そしてプリミティブ・ノイズブラックとして知られ、この界隈でも影響力が強く、アウトブレイク・ショウ氏も最も好むフィンランドのBeherit。



ウォーベスチャルブラックメタルはUSブルータルデスメタルとは枝分かれしたジャンルだが、ルーツを辿ると至近距離にあった事が分かる。後にAngelcorpseで活躍するPete Helmkamps氏が在籍していたOrder from Chaosや、近年、「暗黒系」「地獄系」とも呼ばれるスタイルの元祖となるIncantationも紹介している。


ウォーベスチャルブラックメタルという括り以外で紹介される事も多いが、フィンランドのブラックメタルImpaled NazareneやドイツのサタニックグラインドBlood。こういった周辺ジャンルからの影響も色濃く受けているのが特徴だ。


左頁はレーベル紹介。そして右はSadistik Exekution。このジャンルはオセアニアでも盛ん。


また必ずしも「辺境メタル」という訳ではないにしても、他のメタルサブジャンルに比べて、ウォー・ベスチャル・ブラックメタルは欧米以外の第三世界から数多くのバンドが登場して、シーンが盛り上がったジャンルである事は確かだ。シンガポールのAbhorerや


フィリピンのDeiphago(後にコスタリカに移住)などが有名なバンドとして知られる。


シンガポールのImpietyの存在感は凄まじく、東南アジアのバンドは多かれ少なかれこのバンドの影響を受けていると言っても過言ではない。


このジャンルの総本山と言えるNuclear War Now! Productionsのコニシ氏にインタビュー。非常に貴重な話が聞けた。


ペルーのGoat Semenへのインタビューにも成功。



近年のフレンチブラックとは全く一線を画す、むしろアメリカで評価の高いフランスのLügerのインタビュー。



ロシアは近年スラミングブルータルデスやペイガンフォークが盛んだが、同国のウラル山脈麓ペルミ出身のブラックデスPseudogodへのインタビュー。


マレーシアのMantakや来日経験があり、メンバーが殺害された事でも知られるSurrender of Divinity。


日本で最もウォーベスチャルブラックメタルをリリースしているDeathrash Armageddonの浅井氏にもインタビューでご協力頂いた。


高円寺のRecord Boyも精力的にウォーベスチャルブラックメタルの音源の普及に努めており、インタビュー。大倉店長はディスクユニオンでのトークイベントにも登壇される。


ウォーベスチャルブラックメタルのシンボルに山羊が活用されるが、その文化的解説。


本書のカバーを描かれたSickness666がボーカルを務めるZygoatsis。


圧倒的な地獄サウンドからAntediluvianとともにブルータルデスメタルファンからも評価の高いDiocletian。


日本アンダーグラウンド界の長老はるまげ堂の関根氏にもインタビュー。グラインドコアで知られているが、ウォーベスチャルブラックメタルの造詣も深く、近年では同ジャンルの取り扱いが増えてきている。


韓国で孤軍奮闘しているNocturnal Damnationへのインタビュー。


スリランカは近年、有力バンドを輩出してきている事で注目されているが、同国を代表するGenocide Shrinesにも話を聞いた。


女性ギタリストMoenosが率いるSex Messiahへのインタビュー。冒頭のImpurityの来日招聘を実現させた人物でもある。


反仏教を掲げる三重のウォー・ブラック・グラインドReek of the Unzen Gas Fumes。世界的な人脈を持ち、本書でインタビューした海外バンドのインタビューの仲介でも協力頂いた。



インドのバンガロールを拠点にTrend Slaughter Festなども主催するレーベルCyclopean Eye Productionsのインタビュー記事。


Sighの川嶋未来氏は、80年台から海外のカルトスラッシュバンド達と直接交流を取り、テープトレードをしていた事でも知られる。同氏のそうした側面への話をお伺いした。


ざっと本書のポイントとなるページを紹介したが、ここには載っていない魅力的なコンテンツも豊富に収録されてある。


ウォー・ベスチャル・ブラックメタルはエキストリームメタルの中でも特にアンダーグラウンド志向が強く、これまで情報は非常に限られていた。日本はおろか海外でも書籍としてまとめられ事はない。したがって本書『ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブック』は非常に謎めいた同ジャンルに焦点を当てた本としては世界でも初めての試みとなる。既に海外からも問い合わせが複数来ている。日本語でこの様な本が出版されるというのは前代未聞である。このジャンルに関心がある方々は是非手に取って確かめて頂きたい。


本書は一般書店では11月10日頃発売の予定だが、浅草デスフェストで先行販売する以外にも日本各地のレコードショップでも正式発売日よりも数日早く販売を開始する予定だ。A5判224ページ、2200円。





2016年10月20日木曜日

DOMMUNEで『ブルータルデスメタルガイドブック』やります!






2016年11月8日(火)19:00~21:00に、DOMMUNEで『ブルータルデスメタルガイドブック』をやります。

出演するのは『ブルータルデスメタルガイドブック』の著者でRiff Cultの脇田涼平さんと編集者ハマザキカク。

スタジオ観覧もできるので、興味がある方々は是非いらして下さい。『ブルータルデスメタルガイドブック』のシールを差し上げます。

もちろんUSTREAMの番組なので、自宅でも視聴できます。

http://www.dommune.com

DOMMUNEは今まで私以外にデスメタラーが出演した事はないらしいので、デスメタル界隈では知らない人もいるかもしれませんが、宇川直宏さんが主催している音楽ネット番組です。

今まで『デスメタルアフリカ』と『デスメタルインドネシア』をやらせて貰いました。

今回の『ブルータルデスメタルガイドブック』の回では、地域という視点ではなく、ブルータルデスメタルというジャンルそのものに焦点を当てます。

このジャンルを生み出したパイオニアや、代表的なバンド、幾つかに枝分かれしている潮流、他のジャンルとの関わり、そして最新のホープなどをウンチクを交えて紹介する予定です。

ブルータルデスメタルという、デスメタル中でも最も凶暴なジャンルをこの様な番組で紹介するのは前代未聞です。

なので『ブルータルデスメタルガイドブック』の熱心な読者は必見です!

明日は残業しないで、速攻で家に帰りましょう!

2016年10月12日水曜日

『ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブック』を出版します!


『ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブック』という本が出ます。『世界過激音楽』シリーズの第4弾です。著者はアウトブレイク・ショウさん。


ウォー・ベスチャル・ブラックメタル(War Bestial Black Metal)はエクストリームメタルの中でも極めて特殊なジャンルです。ルーツはブラジルのSARCÓFAGOやカナダのBlasphemy、フィンランドのBeheritらにあります。


90年台に北欧のブラックメタルがシーンを席巻するにつれて、メロディを取り入れ、耽美的で軟弱になってしまったバンドが増えました。そんな流行に背中を向け、ひたすらブラックメタルやスラッシュメタルが持つ暴力性や残虐さ、荒々しさを守り続けた一派がいました。それがウォーメタル、ベスチャルブラックメタルと言われる集団です。


主に北欧系から影響を受けたブラックメタルがメインストリーム化、メジャー化して、一般大衆に媚びた結果、本来の攻撃性を失った今、再びウォー・ベスチャル・ブラックメタルに再評価の兆しが見えてきています。


ブラックメタルやデスメタルがメインストリーム化するなか
世界各地の地下シーンでスラッシュメタル・デスメタル・グラインドコア・
ハードコアを融合させながら真の野獣性を死守し続けたオールドスクールな背徳者達
軟弱化した北欧ブラックメタルに対して、頑なにメタルが本来持つ暴力性を貫き続けたシーンの主要バンドやリリースを丹念に紹介した前代未聞の歴史的資料

本来、日本で出版物になる様な対象のジャンルではないと言っても過言ではありません。デスメタルやブラックメタルなどエクストリームメタルの中でも、最も表に出ることが少なく、情報が希少で、徹底してアンダーグラウンドのジャンルです。


収録内容はこのジャンルを生み出した元祖や;


■ベスチャル・ブラックメタルのレジェンドSARCÓFAGO
■「冒涜」ウォー・ブラックメタルの権化BLASPHEMY
■極悪プリミティブ・ノイズブラックメタルの帝王BEHERIT

HOLOCAUSTO・PARABELLUM・MYSTIFIER・ARCHGOAT・NAKED WHIPPER・BESTIAL WARLUST・ABHORER・DEIPHAGO・UNHOLY ARCHANGEL・CONQUEROR・HADES ARCHER・NUCLEARHAMMER・PROCLAMATION・TRUPPENSTURM・SADOMATOR・REVENGE・MORBOSIDAD・BLACK WITCHERY・DEMONOMANCY 他


界隈の重要人物へのインタビュー;


■Nuclear War Now! Productions!・Deathrash Armageddon
Record Boy・はるまげ堂・Cyclopean Eyes・SIGH等重要人物インタビュー


そして近寄りがたい雰囲気を放ちまくっている数々の大御所バンドへのインタビューに成功しました。普段あまり表に出てくる事はない世界の人達なので、極めて貴重です。


■インタビュー収録バンド、IMPURITY・GOATPENIS・GOAT SEMEN・NECROHOLOCAUST・LÜGER・PSEUDOGOD・DIOCLETIAN・INFERNAL EXECRATOR・NOCTURNAL DAMNATION・GENOCIDE SHRINES・SEX MESSIAH・REEK OF THE UNZEN GAS FUMES


このジャンルを理解する上で必要不可欠なコラムも複数用意しています。


時代解説・レーベル紹介・フライヤー特集・カバー曲解説・メキシコ移民・ヤギ崇拝コラム・ウォーベスチャル用語辞典


このウォー・ベスチャル・ブラックメタルはメタルの中でも独特の世界観で有名で、ガンベルトや山羊、戦争などのイメージを取り入れています。一見、時代錯誤的で守旧的なイメージにも見えますが、若い世代の間では彼らのファッションが最もメタル的で格好良いと人気が出始めています。


そしてこの『ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブック』のカバーは、このシーンのイラストレーターとしては最も有名な人物の一人、Sickness666に描いて貰いました。非常に素晴らしい出来になっています。


この『ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブック』の著者のアウトブレイク・ショウさんは『Outbreak of Evil』というブログを運営されています。ご覧頂くと分かる通り、このジャンルにおいて日本でもトップレベルの情報を配信している事が分かります。


@outbreak_on_twi


さてこの本が出来上がるのは11月の頭で、書店やネット書店では11月10日頃だと思います。値段は2200円で224ページ。日本は当然、世界的にもこのウォー・ベスチャル・ブラックメタルをメインテーマに据えた本は出版された事がありません。エキストームメタル出版史上、極めて貴重な資料となる『ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブック』、是非ご期待下さい。

2016年10月1日土曜日

『デスメタルインドネシアンナイト』、無事開催されました! 当日の様子をレポート


昨晩2016年9月30日、阿佐ヶ谷ロフトにて『デスメタルインドネシアンナイト』が開催されました。

直前に『ブルータルデスメタルガイドブック』も出来上がったので、『デスメタルインドネシア』とダブル刊行記念イベントです。




このイベントのわずか二日前に『ブルータルデスメタルガイドブック』が出来上がりました。もし何らかの印刷ミスや事故が発生していれば、間に合わなかったので、危険と言えば危険な賭に出た訳です。しかし無事完成しました。


出演者は以下です。右奥から

住田雄介(Defiled)
小笠原和生(『デスメタルインドネシア』著者/Asian Rock Rising)
脇田涼平(RNR TOURS/インドネシアパンク)
ハマザキカク(『デスメタルアフリカ』)
漆原直行(メタル司会者)



まずは『デスメタルインドネシア』の小笠原さんがインドネシアのメタルの基本をおさらい。浅草Death Festへの出演も決まったインドネシアのHELLCINATE。同国ではレアなウォーブラックを紹介。


同国のメタルの中心的な存在であるSucker Headについて解説。残念な事にリーダーは先日、逝去されてしまいました。



次にDefiledの住田さんがインドネシアのライブや現地事情について解説。司会者がMCをして爆笑するといった変わった話が沢山聞けました。



北京でのライブを報告する住田さん。後ろには「極端音楽」という横断幕が。もちろん意味は「Extreme Music」。これを紹介した後、爆笑。


前回の『デスメタルアフリカンナイト』の時に出演して下さった関根さんも駆けつけて下さいました。身を乗り出して聞き入ってます。


次に『デスメタルインドネシア』でハードコアパンクを書かれた上に、『ブルータルデスメタルガイドブック』を著者として書き上げた脇田さんがインドネシアのメロディックパンクやハードコアについて語ります。


アメリカのバンドとそっくりにやりながらもハイクォリティらしく、TOKIO並のアイドル的な存在らしいです。



この後、『ブルータルデスメタルガイドブック』の話題に移り、どういったバンドが重要だったのかの話。なんと言ってもブルータルデスメタルで重要なのはDisgorgeという事で、見解が一致。脇田さんが一番好きなバンドはDeeds of Fleshとの事。住田さんがDisgorgeが当時のシーンに与えたインパクトを解説。



脇田さんはメロディックパンク、ブルータルデスメタルだけでなく、デスコアにも造詣が深く、ブルータルデスメタルの中でもデスコア寄りのIngestedをお勧め。


インドネシアのデスメタルとブルータルデスメタルという相当マニアックなテーマにも関わらず、大勢の方々がいらっしゃってくれました。実はこの会場には日本デスメタル界でも重要な方々が多数来場しました。



最後に私ハマザキカクが『デスメタルインドネシア』に入れそびれてしまって、激しく後悔しているMentrual Disconsumedを紹介。これはTwitterでも日本有数のブルデスマニア、ぶるたるんさんに教えて貰ったバンド。


今までインドネシアが世界のブルータルデスメタルの最前線を突き進んでいたが、ラオスからDisseveredという超絶激しいバンドや、タイからもIntricatedやEcchymosisなどインドネシアよりもインドネシアらしく、超高速フルブラスト系のバンドが出てきている事を解説。インドネシアもうかうかしていられません。



最後のコーナーはクイズ大会。選択肢が受け狙い。


クイズ大会の時点で、話す事が多すぎて予定よりかなり遅れてしまっていました。『ブルータルデスメタルガイドブック』の白焼きと一部抜きが景品という珍しい事に。


この様な感じで3時間半、みっちりブルータルデスメタルについて語りました。お陰様で物販も大繁盛でした。またイベント終了後も同会場に多くの方々が居残って、交流会の様になりました。バンド関係の顔見知りだけでなく、普段TwitterやSNSなどではやりとりした事があっても、実際に会うことはなかった人達とも挨拶が出来ました。


お越し頂いたお客様、出演者の皆様、そして阿佐ヶ谷ロフトの皆様に感謝申し上げます。