2016年7月11日月曜日

鳥居咲子著『ヒップホップコリア 韓国語ラップ読本』が出ます!

 

突然ですが『ヒップホップコリア 韓国語ラップ読本』が出ます! 著者は韓国のヒップホップサイトBloomint Musicを運営する鳥居咲子さんです。またこの本は世界中の非英語圏ヒップホップを集めた『ヒップホップグローバル』シリーズの第一弾です。


Bloomint Musicのサイト


韓国は世界有数のヒップホップ大国として知られ、Psyのカンナムスタイルが流行ったのも記憶に新しいところです。世界ではK-Hiphopと呼ばれ、日本でも近年、ファンが激増中です。


特に日本人にとって、韓国語のラップは日本の歌謡曲や演歌、カラオケと似ていて、アメリカの黒人のヒップホップよりも身近に聴こえます。また韓流アイドルから流れ着く人も多いようです。確かに韓国には、他の国では見られない「ヒップホップアイドル」と言われる、ルックスが売りの人たちもいます。


またアメリカで育った韓国系移民の二世や、帰国子女のラッパーも多く、英語の発音も抜群です。そしてよく言われるように、韓国の人口だけでやっていくには少すぎる為、最初から海外進出を視野に入れて活動しており、よりグローバルにプロデュースされている事も多いようです。


韓国語自体、「パッチム」と呼ばれる子音で終わる言葉や激音や濃音が多く、日本語や他の言語に較べてもかなり滑舌良く、激しく聴こえる為、ヒップホップに向いた言語だと言われています。


この『ヒップホップコリア』では;

●ラッパーの実名ハングル・生年・活動期間
●代表作レビューとYouTubeのリンクURL
●各種SNSのURL
●プロデューサー・レーベル・クルーも入念に解説
●重要ラッパーにインタビュー
●ラッパーの音源収益の実態解明
●韓国ヒップホップ歌詞分析
●韓国ヒップホップの歴史
●韓国ヒップホップ用語解説
●ストリーミング サービス紹介
●ヒップホップ日韓親善
●時計・靴・車の所持品自慢

などの内容が収録されています。まさに韓国のヒップホップを知る上で、日本初となる概説書です。この本を読めば、韓国のヒップホップの歴史から主要なアーティスト、関係者、最近の様子などが全て分かります。


特に有名ラッパーの代表曲のYouTubeのURLを数多く掲載しているので、この本を見ながら、韓国ヒップホップの代表曲・有名曲を手っ取り早く、ほぼ全て実際に聴くことができます。


またそれ以外にも菊地成孔さんの寄稿コラムや、脱北ラッパーのインタビュー記事なども掲載していて、盛り沢山です。


このチラシに載っているのは

●極貧からスターダムへ成り上がったギャングスタDok2
●正統派からSWAGへ変貌でも実は温厚で女性ファン多数The Queitt
●脱アイドル成功し、世界で活躍するスーパースターJay Park
●大衆化貢献超イケメンSimonDominic
●ディス戦・大麻逮捕の問題児E Sens
●70万売上40代誰でも知ってるJinusean
●スタンフォード卒文学詩Epik High
●低音ボイスと誠実な歌詞で包容力抜群Paloalto
●『It G Ma』スクリーモラップ世界輸出Keith Ape
●機械のような奇人芸術家=Zion.T
●ヒップホップ女王ユンミレTasha
●ライムとフロウ抜群美声Verbal Jint
●パンチライン・キングSwings
●李明博親族Double K
●完璧な色男プロデューサーGray

などですが、それ以外にも総勢65組のアーティストが収録されています。韓国のヒップホップを知りたい方、元々好きな方に是非おすすめの『ヒップホップコリア』。192ページ、オールカラーで2200円で、見応えもあります。DTPは北村卓也さんが手がけ、非常にスタイリッシュなデザインになっています。


今現在印刷中で、書店に並び始めるのは8月上旬です。鳥居さんのBloomint Musicで先行販売も予定しています。


さてここからは私ごとなので、特に私に興味ない人は読まないでも構いません。


私自身、ブルータルデスメタルが最も好みの音楽の一方で、ドイツやロシアなど非英語圏のヒップホップも好きで、韓国のヒップホップも結構聴いていました。そもそも非英語圏ヒップホップで一番最初にハマったのが韓国語のヒップホップで、韓流が流行る遥か前のIMF不況直後の1998年ごろに韓国を訪れた際に、初めて出会いました。


ソテジワアイドゥル程、遡りはしませんが、Jinuseanやgod、Diva、ユスンジュンなどが流行っていた頃です。怖いもの見たさで聴いていたらかなり中毒化し、TURBO CLUBという韓国芸能サイトをチェックするのが日課となっていたぐらいです。その頃に同じく韓国ヒップホップにハマってしまった友人もいました。


しかし時が経つにつれて徐々に韓流が流行り、大衆芸能ポップス化するか、オシャレでジャジーなヒップホップが増えて、あまり面白く感じなくなってしまい、次第に遠ざかってしまっていました。


2000年代中期からはドイツやロシア、フランスのヒップホップばかり聴いていて、ブルータルデスメタルよりも聴いていたぐらいです。


しかし確か2012年ごろ、久しぶりに韓国のヒップホップを検索していたら、たまたまIllionaire RecordsのDOK2とThe Quiettの『Give it to me』を見かけて、ここまでハードコアなラップに進化していたのかと大変驚いた訳です。以前、韓国で見かけていた、どことなくポンチャックっぽくて、ダサカッコ悪い要素は全く見当たらず、とても洗練されていて、迫力があります。




そして「Dok2が格好いい」とTwitterで呟いていたりした事が切っ掛けで、Bloomint Musicの鳥居さんと知り合います。ブログを見てみると、あまりにも韓国のヒップホップに精通されている上に、韓国からラッパーまで招聘して、ライブまで開催されており、その行動力に目を見張りました。執筆のお願いをしたのは昨年の終わり頃で、長期間制作していたわけではなく、非常に高速に書き上げられました。誤植も非常に少なく、正直、相当な書き手です。


「世界中でヒップホップが流行っている」という言い方はよくされます。しかしデスメタルなどと違って、ヒップホップは言語がベースの音楽なので、実はその国のドメスティックシーン以上の広がりを持たないことが多いです。実際日本でもヒップホップというとほとんどがアメリカか日本の事を意味し、それ以外の国のヒップホップが注目される事はあまりありません。結局、ドイツやフランスのヒップホップも、たまたま検索したら引っかかったのに驚いて、投稿している人はたまに見かけますが、熱心にシーンをウォッチし続ける人は極めて稀です。


「ドイツ ヒップホップ」「フランス ヒップホップ」と検索しても、私が『ロケットニュース23』で連載している『辺境音楽マニア』ばかりがヒットしてしまうぐらいなのです。


韓国は世界の中では比較的日本との距離が近いですが、それにしても鳥居さんの様に、韓国のヒップホップシーンを丹念に調べあげ、アーティストと実際に直接交流を取り、そして日韓の架け橋になっている人は貴重な存在です。この『ヒップホップコリア』が切っ掛けで、韓国語ラップ、そして世界の非英語圏ラップがブレークする事を期待しています。






0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。