2016年2月24日水曜日

『共産テクノ』が完成! 中身をお見せします。

四方宏明さんによる『共産テクノ』が完成しました。実物を写真付きで紹介します。



カバーはこんな感じです。赤と黒を基調にした共産趣味風の雰囲気。派手で書店で目立ちそうです。



帯を取ったところ。ソ連と近未来感を融合した、人に見せびらかせたくなるクールさ。



カバーを取り外した表紙。


FAXDMの時点で、Twitterで気が付いた人もいましたが「共産テクノ」用のロゴ。


Kraftwerkの身なりをしたゴルバチョフ。……と随所に遊びココロが満載。芸が細かい。


さて本編ですがソ連電子音楽の元祖、ヴィチスラーフ・ミシェーリン。あのガガーリンも宇宙でミシェーリンの音楽が頭で流れたほど、ソ連で人気。


いきなり2番目に出てくるのが、ハバロフスク近郊のナナイ族出身の口琴テクノ、コーラ・ベルドィ。見た目がジミー大西風で、それだけでインパクトあります。本人は意図せざる民族音楽テクノみたいな事になっていました。


ソ連では有名ミュージシャンが欧米の人気曲を、クレジットを表記しないで自分たちのオリジナルソングとして発表する事も横行していました。情報が限られていたのでバレにくいという事もありますが、そもそも著作権の概念も曖昧で、当局も西側の音楽を「退廃的」だとして非難していたからです。


見た目的にはまるでアメリカの歌手PINKの様なスタイリッシュさのジャンナ・アグザラワ。しかし彼女はパスポート偽造の罪で、半年間の強制労働に課された事もあります。そこら辺がソ連ならでは。彼女の曲は『グッバイ、レーニン!』でも流れていたほど、東側全土で人気。



ソ連はアメリカと対抗していた為、露骨にアメリカンな雰囲気の音楽をやりにくい環境。そこでアーティストはエアロビクスなどスポーツ用の音楽だという風に取り繕い、当局のお墨付きを得ます。その結果、「スポーツテクノ」とも呼べる一大ジャンルが大流行。ブレイクダンスやスケボーの姿のジャケット達。


 

そしてなんと四方さんがモスクワでスポーツテクノを作っていたラジオノフとチハミロフにインタビューもしています。インタビューの中で、実はメロディヤや音楽芸術委員会という、本来監視の立場にいる組織が、ミュージシャンの間違いを指摘したりして、音楽の向上に寄与し、ある意味プロデューサー的な役割を担っていた事などを打ち明けてくれたりと、興味深い話が沢山出てきます。



『モスクワ 不思議の都』というソ連崩壊直前に刊行されたガイドブックがあるのですが、そこに載っていた観光スポットを今訪れたらどうなっていたかのレポート・コラムも。


博物館では超巨大なANSシンセサイザーも。


面白エピソードばかりに見えますが、ちゃんとした音楽レビュー記事もあります。髪型やファッションまでそのまんまDepeche Modeのビオコンストルクルというダークウェイブ。音楽的にも格好良いようです。


『エイティーズ』というペレストロイカ時代を舞台にした、アメリカンドラマ風シットコムや、『エレクトロモスクワ』というソ連の電子楽器のドキュメンタリーなど映像関連のコラム。


ソ連はロシア以外の国によっても構成されていました。したがってロシア以外の国々のテクノシーンも紹介しています。右はエストニア出身のKraftwerkをレゲエ・カバーした事で知られるトルナード。なんとフセイン統治下のイラクで公演したこともあるそう。


旧ソ連の音楽は日本では入手しにくいですが、オンラインで検索する方法なども解説。


テクノはKraftwerkやYMOがロシア・アヴァンギャルド風のカバーアートの作品を沢山リリースしていた事もあり、そもそも「共産主義」っぽいイメージと親和的。このコラムでは世界各国のロシア・アヴァンギャルド風のカバージャケットを集めて紹介。日本のアイドルも多数いますね。


ソ連は宇宙開発でアメリカとしのぎを削っていただけに、宇宙のイメージが歴史の進歩の様な未来イメージと直結していました。そんな中でフランスのその名も「スペース」というバンドが、ソ連で公演し人気を博します。その影響もあってスペースディスコが大流行。ロシアではなく、ラトビア出身なのにスペースディスコを体現したゾディアックというバンドは2000万枚を売り上げるほどヒット。




おまけに日本での「共産テクノ」として、インリン・オブ・ジョイトイを紹介。


そんなこんなで大変盛りだくさんな内容の『共産テクノ』。ご覧のとおり、テクノ愛好家、テクノリスナーだけでなく、ソ連やロシア、共産圏に興味がある人にも楽しんでもらえる内容になっています。


早ければ3月10日頃に発売です。なおAmazonなどのネット書店での予約はもうしばらく後の3月に入ってからになると思われます。

ぜひ『共産テクノ』、手に取って見てください。



2016年2月9日火曜日

四方宏明さん執筆の『共産テクノ』を出版します!




『共産テクノ ソ連編』が出ます。著者はテクノポップの第一人者で知られ、All Aboutでガイドを努める四方宏明さんです。



テルミンを生み出すほどの電子楽器大国だったソ連。一方でそれは「収容所群島」と呼ばれる抑圧体制を敷いていました。


若者達は当局の監視から逃れる為に、政治信条を問われないインストゥルメンタル曲に専念したり、あるいは音源を「サミズダート(地下出版)」で流通させたりと試行錯誤を余儀なくされました。結果的にダビングによって、ねずみ算式に増殖した非公式「テープレコード」がソ連全土に行き渡りました。


また著作権の概念が理解されておらず、情報も限られていた為、、欧米の人気曲をクレジットを載せず、オリジナル曲として発表する事も多発しました。そもそも西側の機材を入手する事が困難だった為、ミュージシャンが楽器を自作する事もありました。またわずか2トラックの録音機を駆使した「人力テクノ」まで現れます。


ペレストロイカ期には、国民の体力増強を図る政府と、国営レコード会社メロディヤ、そしてアメリカでブレイクビーツを目撃し、それをどうにかして取り入れたいミュージシャンの利害が一致し、「エアロビクス用の音楽」という建前の音楽が生まれ、そこから「スポーツテクノ」なるジャンルまで出現します。


更には「音楽芸術委員会」という本来、検閲の立場にいた組織が、ミュージシャンの音楽的な間違いを補正するなどして手助けし、音楽の品質を向上させていました。


またフランスのテクノバンド「SPACE」が、ソ連で公演して人気を博し、元々宇宙開発先進国だった事もあり、宇宙イメージと親和的な状況の中、ソ連でスペースディスコが大流行します。


この様にソ連のテクノは、アメリカやヨーロッパ、日本など資本主義陣営とは異なった環境で、様々な制限を課された事によって、不思議な形態へと進化していました。今の時点から見てみると、かなり変な事になっています。テクノが近未来風志向な雰囲気を狙っているだけあって、余計変に見えます。


このソ連のテクノの不思議な謎を、元々、テクノポップの第一人者として知られる四方宏明さんが徹底的に調査しました。テクノが音楽的に好みでなくとも、共産趣味的、いや文化人類学的に大変興味深いエピソードが盛りだくさんです。


今現在ロシアは様々な音楽ジャンルで、世界的に人気を博すミュージシャンを多数輩出していますが、その歴史的背景はテクノと通じるものがあり、ロシア音楽ファン全般にとっても参考になる話が多く紹介されています。必ずしもテクノ愛好家向けに限定した内容ではありません。


この『共産テクノ ソ連編』は早ければ3月8日頃発売予定です。224ページ、オールカラー、音源やアーティスト名全てロシア語表記併記と凝った造りで2200円です。なお今回は「ソ連編」とある通り、『共産テクノ 東欧編』もいずれ出る予定です。